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詐欺と気づかせない、巧妙なポスタービジュアル詐欺映画『帝一の國』

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 あなたは、映画の上映時間はどのくらいの長さが好きですか。60分、90分、120分あたりが選択肢かと思いますが、僕は割としっかり内容に浸りたいタイプ。長ければ長いほどいいってことはありませんが、120分前後を使って物語を描ききってくれると嬉しいなと感じます。

 その点「帝一の國」は素晴らしかったのではないでしょうか。ネット上ではすでに絶賛の嵐と言っていいほど評判がいいですが、全14巻の原作を2時間に収めつつ、原作ファンもある程度納得できる内容になっています。正直面白かった。原作の有り余るサブカル臭をうまく中和して、大衆ウケする映画に変換。イケメン俳優目当てに訪れた若い女性は上映中ずっとキャーキャー言ってましたよ。うるせえくらいに

 キャストもみんなキャラクターのイメージ通りですし、森園先輩役の千葉雄大さんあたりはまさに「実写版」と言っていいビジュアル。もう一生メガネを外さずに生きていってほしいくらい似てます。

 

 

キャスト以外のビジュアルで重要なのは、背景

 そう。「キャラクタービジュアルは」いいんです。この映画唯一にして最大の欠点は、キャラクタービジュアル以外のビジュアル面……つまり背景を原作に寄せられなかったことです。

 

 

 

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 ドーンと原作1巻の表紙を貼ってみましたが、原作で非常に大きな役割を果たしているのが背景です。

 

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 2巻以降も延々こんな感じ。表紙だけでなく、本編でも要所要所で(一見無意味に)迫力のある背景が描かれ、それがキャラクターの異常な行動を更に際立たせる構造になっているのです。帝一の國の主人公は赤場帝一ですが、主役はこういう合成っぽい背景です。「日本万歳!!!」と叫びたくなるようなアレな感じの背景こそ、漫画版帝一の國の生命線でした。

 

 映画版では、合成以外の背景、セットや群衆の見た目という面でも、昭和が舞台のはずなのに2010年代をバリバリ感じる部分があったりと徹底できなかった印象。こまけえことはいいんだよ!と言っちまえばまあいいんですが、僕は別にイケメン俳優を観に行ったわけではなく、サブカル御用達漫画家古屋兎丸の原作が結構な予算を得て映画化されるというので、世の中にサブカル毒が感染していく様子を観に行ったんです。そのような歪んだ目的を持った人間にとっては、細かい部分こそが気になってしまいました。

 

一般層のために、チープさは抑えなければいけなかった

映画ノベライズ 帝一の國 (JUMP j BOOKS)

 こちらはポスタービジュアルと同じ、映画版ノベライズの画像です。帝一がスタンド使いみたいだったり、東郷菊馬が手から蜘蛛の糸出しそうだったり、氷室ローランドがサタデーナイトフィーバーのジョン・トラボルタみたいなポーズしてたり、森園先輩出る映画3月のライオンと間違えてませんか?って感じだったりで非常にいいビジュアルだと思うのですが、やはり重要なのは桜の花びらが舞い散る背景

人物だけだとただひたすらダサいだけのこのビジュアルに、潔さのようなものを与えてくれているのが背景なのです。背景のおかげで「この人たちはこんなにダサくて、でもそれでいいんですよ。そういう映画ですよ」と訴えかけることができているわけです。

 

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 最初の特報映像でも桜が舞い散る様子が合成されています。とんでもなくチープですが、そもそも原作がカルト漫画家がうっかりジャンプで連載したら変な化学反応が起こってものすごく面白くなってしまった漫画なのですから、こういうチープさはむしろ大歓迎……ではありませんでした

 その後の告知映像は、このようなチープ合成は全く使われず、物語とイケメンに集中できるし美女と野獣観に行くよりちょっとセンスいい感じのポジションとれますよ~~というムード満点なものに。そのおかげで興行成績は好調ですが、B級映画を観に行ったつもりがA級映画を見せられた僕は涙に暮れています。ポスタービジュアルにまんまと騙されたのです。

しかし、世界の8割を占めるまともな感性を持った人たちにとっては、騙されたという感覚などゼロ。ポスタービジュアルの世界観は、映画本編ではぜんっぜん展開されないんですよ?でもポスタービジュアルでみんなが感じたことは、「この映画はちょっと変なコメディ映画なんだね」という程度。騙されたことにさえ気づかず観賞する民衆。ポスタービジュアル詐欺のはずが、そんなことを叫んでいるのはおそらく僕だけ。政府による陰謀説を唱えたくなります。このブログの更新が途絶えたら秘密警察に連行されたと思ってください。

 

 ともあれ制作陣の判断は圧倒的に正しかった。作中で重要な意味を持つ糸電話の糸が終始たるんでいたことや、700人ほどの全校生徒の多くが参加したというある行事に100人程度しか姿が見えなかったことなどは些細な事。映画版帝一の國は、娯楽映画として高い水準にある素晴らしい映画だったと思いますよ。ほんとに。チケット代の元はとれます。

 

スタッフロールはなぜかセンチメンタルグラフティの暗黒舞踏を思い出しました

 いや、ぜんぜん違うんですけど、

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 なぜかこれを思い出しました。映画観てない人は何を言ってるのか全くわからないと思いますが、観ていただければわかると思います。観たけどわからない人はごめんなさい。

ちなみに、上映中いくつかの場面で笑いが起こっていましたが、僕は一番笑ったのはスタッフロールでした。笑っているのは僕だけでした。映画本編の内容を完全に無視した唐突過ぎる映像だったのですが、周りは「かわいぃ~~」とか言ってました。え、ここ一番笑うところじゃないの?と困惑しきりの僕でしたが、多分周りの女性は僕のような異分子にこそ困惑していたものと思われます。でも隣に座ってた女、映画館でマクドナルドのバリューセットとか食うなよマジで。くせえよ。一生デブになる呪いかけてやるわ。

 

 

  なんかメチャクチャ書いてきましたが、この映画が「帝一の國」じゃなくて「弾の國」だったらOKだったと思うんですよね。普通の漫画だったら主人公は帝一じゃなくて大鷹弾だし。変な演出とか全部いらないし、背景も普通でいいし、時代考証とかもテキトーでいい。普通の漫画を普通に映画化しただけになりますから。何より竹内涼真さんが汎用性高いオダギリジョーって感じで死ぬほどカッコよかったので、もうそれだけでお腹いっぱいでした。

 

 結局僕もイケメン俳優の魅力に取り込まれてしまったのです。さようなら。

「帝一の國」オリジナルサウンドトラック

「帝一の國」オリジナルサウンドトラック